どんな書籍?<わたしを離さないで>


本書————————

わたしを離さないで

  • 著者 : カズオ・イシグロ
  • 出版社: 早川書房
  • 文庫 : 450ページ
  • 発売日:2006/4/22
  • キーワード:臓器提供ー臓器移植/クローン人間/科学技術・医療技術の発展/再生医療/倫理

著者————————-

カズオ・イシグロ

  • 1982年:『遠い山なみの光』出版
  • 1986年:『浮世の画家』出版
  • 1989年:『日の名残り』出版
  • 1989年:ブッカー賞受賞
  • 1990年:『戦争のすんだ夏』出版
  • 1990年:『夕餉』出版
  • 1995年:『充たされざる者』出版
  • 1995年:大英帝国勲章受賞
  • 1998年:フランス芸術文化勲章
  • 2000年:『わたしたちが孤児だったころ』出版
  • 2001年:『日の暮れた村』出版
  • 2005年:『わたしを離さないで』出版
  • 2009年:『夜想曲集ー音楽と夕暮れをめぐる五つの物語』出版
  • 2015年:『忘れられた巨人』出版
  • 2017年:ノーベル文学賞受賞

画像の引用先

あらすじ———————

裏表紙より————

優秀な介護人キャシー・Hは「提供者」と呼ばれる人々の世話をしている。生まれ育った施設ヘールシャムの親友トミーやルースも提供者だった。キャシーは施設での奇妙な日々に思いをめぐらす。図画工作に力をいれた授業、毎週の健康診断、保護管と呼ばれる教師たちのぎこちない態度・・・・・・。彼女の回想はヘールシャムの残酷な真実を明かしていく。

Answer siteより———-

キャシーやルースそしてトミーの故郷でもあるヘールシャムでの子供時代から始まり、介護人や提供者になるまでの短くも濃い彼らの道をキャシーが回想していく。その回想の中でヘールシャムでの多くの謎が解明されていきます。そして、その解明の先に待ち受けていたのは残酷な真実でした。本書の終わりに近づくにつれて、故郷の喪失感、故郷を共有出来なくなる寂しさ、人生の在り方そういったものを心に少しずつ浸透させるような物語でした。

本書を読む前に背景を知ろう————-

本書のキーワード———-

1.臓器提供ー臓器移植

臓器移植が世界的に医療として期待され始めたのは1960年代後半でした。世界で初めて南アフリカにおいて臓器移植が行われました。その後、1980年代になると免疫抑制剤の大幅な改善によって臓器移植による生存率が飛躍的に向上し世界各地で臓器移植が行われるようになったのです。科学の発展がもたらした恩恵とも言えるでしょうか。

臓器移植とは「提供者であるドナーから受給者であるレシピエントに対し、臓器を移植する医療行為」のことです。提供者は生体でも死体でも臓器が健康的であれば臓器提供は可能です。しかし、この短い文章の中には複雑な倫理的問題が含まれています。

まず、臓器提供においては個人の意思を最重要視する必要があります。それはなぜでしょうか?次の様に答える人は決して少なくないと思います。「個人の意思を確認できていない臓器移植を認めてしまえば不正や犯罪が起こるから」と。それも確かにそうではありますが、臓器提供者の身体の一部を外部から操作してしまうこと、言い換えると提供者の人生を恣意的に左右しかねないこと、ここに倫理的な問題があるはず。

臓器を提供する人間も一人の人間です。自分の意思で、自分の判断で臓器提供を望むのであれば、彼/彼女のその真剣な態度に私たちは敬意を払わなければなりません。しかし、もしも彼/彼女が自分の意思とは関係なしに臓器提供ー臓器移植を強制されたとしたら、彼らの人生は果たして彼らの人生と言えるのでしょうか?

2.クローン人間

クローンというのは必ずしも人為的に動物や植物のコピーを作製する行為を指しているとは限りません。例えば、植物の群落は一つのクローンとされています。つまり、クローンとは「分子/DNA/細胞/生体のコピー」のことを指しています。

今では、クローン技術は様々な領域で適用されています。私たちの日常にもクローン技術による産物が潜んでいます。例えば、サツマイモやバナナがそれです。動物で言うと、ヒツジ・ブタ・オオカミ・マウス・ネコなどにクローン技術は適用されています。そして、2018年に中国で二匹のクローンサルも誕生しました。研究チームの責任者は「理論上はクローン人間も可能になった」と述べています。

クローン人間も理論上可能。もしも、それが理論ではなく実践され実際にクローン人間が誕生したとしましょう。ここで、生じる倫理的な問題、それは「クローン人間は人間と同様に尊厳があるのか」ではないでしょうか?

尊厳があるのであれば目的の為の道具として扱ってはいけません。一方で、論理的に考えて、尊厳が無いのであれば目的の為の道具として扱っても良いとなるでしょう。しかし、もしも誕生したクローン人間が、人間と同じように生活し友達を作り家庭を築いて生きていたとしたら、そんな尊い人生を道具として扱うために外部から操作して良いのでしょうか?論理では語れない何かが、損得感情で判断してはいけない何かがそこにあるのではないでしょうか?

読了後の感想——————–

科学技術の発展による産物は確かに人間を惹きつけ人間に多大な恩恵を齎しています。その魅力的な産物を盲目的に利用してしまうこと、世界という舞台で科学技術の進歩や経済的発展という演者にばかりスポットライトを当て続けてしまうこと、それと同時に人間の根源的で大切なかけがえのない何かを見失ってしまう危機は表裏一体なのかもしれないと改めて築かされました。

その危機にさらされてしまった人間は、世界が多大な恩恵を被っている裏で、故郷喪失の寂しさを心に背負ってしまうのかもしれません。

本書は最初、ヘールシャムでの奇怪な出来事や、保護管と呼ばれる教師の挙動不審な行動、展示館の噂など不可解なことがキャシー達の前に起こります。その中でも、キャシーはルースやトミーといった親友と友情を深めながら大人になっていきます。ただし、大人になるにつれて様々な問題も生じ、彼らの仲はまるでピエロの持っている沢山の風船のように、手を放してしまえばバラバラになって宙に浮かんで行ってしまうような、そんな関係性にもなっていきます。

ヘールシャムでの不可解な謎とは?彼らの仲はどうなってしまうのか?

わたしを離さないで

  • 著者 : カズオ・イシグロ
  • 出版社: 早川書房
  • 文庫 : 450ページ
  • 発売日:2006/4/22
  • キーワード:臓器提供ー臓器移植/クローン人間/科学技術・医療技術の発展/再生医療/倫理

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